医師が転職を考える理由は?医師の本音
医師が転職を考える理由はいろいろだ。建前的には転職理由はキャリアアップやスキルアップということが多いが、おっさん循環器内科医の場合で言うと、最初は医局人事に嫌気が差した。何の前触れもなくいきなり来月から関連病院へ行けと言われることが嫌になったのだ。結婚して子供が学校に通うようになると落ち着いた生活をしたいと思うようになり家を建てたのだが、その後まもなくして自宅からは通えない地域の関連病院への異動を言い渡された。断れないので仕方なくそこへ単身赴任で行って毎週末に自宅へ帰る生活を2年続けたのだが専門医を取って博士号も取ったら医局にいる必要はもうないと思ったのだ。
医局の人間関係や付き合いも本音では面倒だった。年収も医局で斡旋してくれるバイトを掛け持ちしてやっと家族を養える程度だったのでそれも不満だった。
最初の転職は転職エージェントのサイトから登録して紹介された関東の民間病院だった。
また単身赴任になるのは嫌だったが、年収が大幅アップになって、しかも部長職で診療科の立ち上げをしてほしいという話だった。設備も揃っていたのでカテもできるし、医局をやめた手前、対外的な肩書にも魅力を感じたのだ。今思えばこれが失敗の始まりだった。
まず転職動機が良くなかった。医局の辞め方もまずかったので自宅から通える場所にある病院では働きにくかったのだ。どこも大学との関係が多かれ少なかれある病院ばかりだったのだ。
仕方なく関東の病院へ単身赴任という転職になった。カテの症例数を伸ばして、キャリアアップして医局を見返してやるという気持ちだった。本音の部分では部長という肩書とインセンティブも含め年収は大幅アップしたので何となく医者として自分がえらくなったような勘違いをしていたと今になると思う。
だが実際は煩わしい人間関係から逃げたかっただけだったのだ。
結局この病院はこれまでいた病院とはまるで違い、あらゆる面でレベルが低かった。循環器内科の立ち上げということだったが、スタッフの意識が低く、いくら一生懸命こちらが言っても一向に成長しない。一緒にカテ室に入るのにこのレベルでは危ないと思うことがしょっちゅうあった。つい怒鳴ってしまうこともあったりして、この病院では人間関係がうまくいかなくなってしまった。同じような感じで何度か転職を繰り返し転職回数が増えるとともに履歴書に記載する病院の数が増え、そしておっさん循環器内科医の転職市場での価値は下がっていった。医師不足のはずが面接しても病院から断られた事も一度や二度ではない。
転職を考えている医師は私が失敗した理由や原因を本当に参考にして欲しい。
キャリアアップの為の転職
キャリアアップの為という表面上の転職理由とは裏腹に症例があまり集まってこず、カテの数は転職前よりも減ってしまった。病院自体の格が違うので仕方が無いといえばそれまでなのだがこの転職は失敗だった。
キャリアアップには将来を見すえてキャリアアップになるような病院を選ばないとダメだ。病院選びが大きな転職失敗の理由になった。
目先の肩書に釣られてしまった自分が悪いのだが、部下もいないし研修医も入ってこないような病院を選んでしまっては将来のキャリアアップにつながる訳がない。
自分はうまいので症例数が伸びれば若い先生も集まってくるだろうと甘く考えていたがそんなにうまく事は運ばなかった。
年収アップの為の転職
年収アップの為に転職したいと考えている先生は多いだろう。おっさん循環器内科医もそうだった。転職すれば年収アップ自体はそれほど難しくは無い。何しろ日本は医師不足なのだ。
とりあえず医師を欲しいという病院はいっぱいある。今よりも年収アップして転職することは難しくないが、果たしてそこが自分のやりたい仕事と合ってる病院かどうかだ。
年収アップすれば仕事内容はどこも大差ないしその点は割り切れるというならいいが、仕事内容や世間体などを気にするならそれに合う病院を探すしかない。しかし、いい病院ほど給料は渋い傾向があるのでその場合は大幅な年収アップはあまり期待できない。
まず自分自身が本当に転職したい理由を年収以外でも洗い出してみてはどうか?
人間関係の為の転職
おっさん循環器内科医も人間関係では苦労したのでエラそうなことは言えないが、人間関係がうまくいかないので転職したいという場合は注意が必要だ。それはどこに行っても同じような煩わしい人間関係や面倒なことはあるものだ。ひとつ言えるとするならば、評判がいい病院は働くスタッフも患者さんもまだまともな人間が多いような気がする。
おっさん循環器内科医自身の反省も込めて言うが、悪い人間関係の原因や理由は自分にもあるということだ。
子供の教育環境の為の転職
おっさん循環器内科医には子供が二人いる。まだ上が高校生なのだがどうやら医学部に行きたいらしい。頼むから国公立に行ってくれ。下はまだ中学生なので分からないが金が掛かる私立の医学部にやるだけの金は残念だがうちには厳しい。もしそうなればまた年収アップを狙って転職しなければならないが、おっさん循環器内科医の転職市場での価値は下落の一途で年収アップもままならない。
しかし子供の教育環境は大切だ。子供が医学部に行きたいと言えば親としてはできるだけのことはしてやりたいと思う。同じような理由で転職を考えている医師も多い事だろう。若い先生なら育児や教育環境のいい場所に転職して引っ越すのもいいだろう。最近はお受験熱がすごい。おっさん循環器内科医のいる東海地区でも中高一貫校で医学部受験を目指す子供が多いのには驚く。
受験を理由に転職を考える医師もまわりに少なくなかった。
医者ってそんなにいい仕事じゃないぞ、しんどいぞと言ってやりたい気持ちもあるが、世間から見ればやはり医者って恵まれてるのだろうかと自問自答して自分を慰めているおっさん循環器内科医であった。